《短編》猫とチョコ
『高岡さん!
コレ、今週中に決めるんだったよな?』



あれ以来みぃは、高岡さんの名前ばかり呼ぶ。


それが少し、面白くないあたし。



「みぃ。
英語の宿題、ちゃんとやってんの?」


『あぁ、完璧です。
高岡さんが朝、言ってくれたから。』



またこれだ。


あたしが一番面白くないのは、みぃがあたしに頼ることが少なくなったこと。


そして、みぃと話してる高岡さんの顔が、いつも心なしか赤いこと。


気付いているのかいないのか、みぃは高岡さんに話しかける。


委員だけのわからない会話と、隣同士の席。


全く入っていけないあたし。



『…ヒナ、相当ストレス溜まってんじゃないの?』


「言わないで!」



バレンタインまでが勝負のはずなのに。


あたしはまだ、みぃとの距離を詰めることさえ出来ていない。


それどころか逆に、離れてる気がする。



『クセモノだね、高岡さん。
みぃくんも、何考えてんだか。』


みぃの姿を見つめ、サクラまでもがそんなことを言い出した。


口に出して言われれば、想像したくないことまで考えてしまう。


もしかしたらみぃは、高岡さんが好きなんじゃないか、って。


そんなはずないって思いたいけど、

みぃがあたしを好きだってことさえ、思い込めるの要素はない。


みんなで帰ろうと誘っても、

みぃは“日にち少ないから残る”とか言い出すのだ。


死人のようにヤル気を見せることが少ないみぃが。


あたしの時でさえ、手伝わずに見ているだけだったみぃが。


そんなみぃを見るのが、嫌で堪らなかった。


こんなの、あたしの知ってるみぃじゃない。


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