《短編》猫とチョコ
『…何それ…!
そんなの、あたしだって嫌に決まってるよ!』


保健室に連れてこられ、泣きながらあたしはサクラに全てを話した。


まるで自分のことのようにサクラは、悔しさを滲ませた。


だけど冷静になってみれば、もぉ何もかも遅いのかもしれない。



『…明日、バレンタインだよ。
どーすんの、ヒナ?』


心配そうにサクラは、あたしに聞いた。


結局、何も出来なかったどころか、バレンタイン前日に嫌われてしまったのだ。


折角今まで、みぃとの関係を築き上げてきたのに。


なのに簡単に壊してしまった今、

あたしはどんな顔をしてチョコを渡せと言うのだろう。



『…てゆーかあたし、みぃくんのやってること理解出来ない!
結局、ヒナのこと何だったわけ?!』


“話してくる!”と言って保健室を飛び出そうとしたサクラを、

あたしは必死で止めた。


“高岡さんが好きだから”なんて聞いた日には、

きっと絶望してしまうだろうから。


今のあたしに、そんなことを受け止められるほど、心に余裕はないんだ。



「…もぉ、諦めるから…」


『ダメ!!
そんなの、絶対にダメ!!』


呟くあたしに、サクラは声を上げた。


あたしよりもっと、泣きそうな顔で。



『チョコ、作るだけでも作ろうよ!
諦めるくらいなら、振られる方がマシだよ!!』


「―――ッ!」


『…知らない間にみぃくんが、高岡さんと付き合ってても良いの?
そんなんじゃ、後悔だけが残るんだよ?』


サクラの言葉に、止まったはずの涙がまた溢れ出てきて。


本当に、もっともな言葉だから。


苦しすぎて、苦しすぎて。


もぉ、どうすることも出来なかった。


だからこそ、みぃに振って欲しかった。


そうでもしなきゃ、前にも後ろにも進めないから。



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