《短編》猫とチョコ
―ガラガラ

『ヒナ!
おはよ、来ないのかと思って心配しちゃったよ!』


あたしの姿を確認したサクラは、安堵のため息をつきながらこちらに向かってきた。



『…ちゃんと、作れた?』


「…うん。
みぃの好きな、めちゃくちゃ甘いやつ。」


かばんの中に忍ばせているそれを思い浮かべた。


みぃのことばかり考えて作ったもの。



『あたし、絶対大丈夫だって信じてるから!』


「…ありがと。」


少しだけ、そんな言葉に救われた。



『…ヒナちゃん。
サクラから聞いたよ。頑張れな。』


短くも、春本くんが言ってくれた。



「…ありがと。
春本くんに義理チョコないけど、許してよね!(笑)」


『ははっ!
そんなの気にしなくて良いから!』



本当は、サクラの以外いらないくせに。


だけど、ただそれだけのことが嬉しかった。


あたしには、励まして背中を押してくれる友達が居るから。


みぃと高岡さんの席は、あたしより後ろ。


二人の姿を見なくて良いことだけは幸いだった。


放課後までの間、春本くんがみぃをピッタリマークしてくれると言う。


誰にもみぃを呼び出させないための究極の作戦なんだと、今朝サクラが言っていた。


そんなお節介が、だけどあたしに勇気をくれて。



滞りなく行われた、3年生の卒業を祝う会。


みぃと高岡さんが作り上げたから、

うちのクラスがこんなにもスムーズに出来たのだろう。


そう思うと、負けた気しかしなかったけど。


“勝てるかも”なんて今はもぉ、微塵も思ってないから。


だからどこか冷静に、式に出ている自分が居た。



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