《短編》猫とチョコ
「―――みぃ。
ちょっと、良い?」


全てが終わり教室に戻ってきたみぃに、あたしは勇気を出して声を掛けた。


もしかしたらもぉ、話さえしてくれないのかもしれないけど。


気付いたように春本くんは、そっとあたし達と距離をとった。



『お疲れさん。』


少し疲れ、だけど充実しているような笑顔を向けてくれたみぃ。


その顔に、意思とは別に胸が締め付けられて。



「…そのっ…。
今日の、放課後、なんだけど…」


『そうそう!
俺も、ヒナに話あるからさ!』


「―――ッ!」


言われるより先に、みぃに言われてしまった。


だけどその内容に、見当はつかない。



「…話って…?」



―ガラガラ

『席つけよー!』


タイミング良く入ってきた担任に、あたしの言葉は簡単に遮られてしまった。


“後でな!”と言ってみぃは、すぐに自分の席に戻ってしまう。


だけど、期待なんてしたのは一瞬だった。


その後にあたしの目に映っていたのは、

みぃと高岡さんが嬉しそうに笑い合っているところ。


きっと、さっきの式の成功を喜び合っているんだろうけど。


見なきゃ良かった。


もしもみぃが、高岡さんと付き合うことになったとあたしに告げたら。


みぃの口で、直接そう言われたら。


考え出すと、止まらなくなって。


長い長い、死刑を待つ囚人のような時間。


授業も友達の声も、まるであたしにまでは届かなかった。



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