《短編》猫とチョコ
ついには誰も居なくなってしまった教室。


いい加減、待ちくたびれた。


もぉ半分は、ヤケクソに近かったのかもしれない。


“どーせ振られるんだから”と気合いを入れ、

かばんの中から銀色のラッピングを取り出した。


学校の中でさえ、もぉ人は数えるほどしか居ない。


沈みきる直前の陽が、名残惜しそうに世界を照らす。


チョコの入ったラッピングを握り締め、みぃを探す。


とりあえず、職員室だ。


そう思い、駆け足で階段を下りた。



『―――たし……から…です…』


話し声が聞こえ、無意識に足を止めた。


マズいところになんて遭遇したくないから、ソッと影から顔だけを出して確認。



「―――ッ!」


一年生であろう女の子と、こちらに背中を向けた男の姿。


一瞬だったけど、すぐにわかった。


あの後姿は、みぃだったから。


その瞬間に動けなくなりあたしは、生唾を飲み込みながら聞き耳を立てた。



『……ずっと、好きでした。
あたしの気持ち、受け取ってください。』


「―――ッ!」



あぁ、やっぱり…


聞くんじゃないってわかってるのに…



『…ごめん。
俺、好きな女以外、そーゆーの受け取らねぇから。』


みぃの声があたしを突き刺した。


崩れ落ちていくようにあたしは、体中の力が抜けていくのを感じる。


無意識のうちに握り締めたチョコのラッピングが、クシャッと音を立てる。


ただ、これ以上その場には居られなかった。


きびすを返しあたしは、逃げるように教室に向かった。





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