《短編》猫とチョコ
『…何言ってんだよ、ヒナ。』
戸惑うあたしに、みぃはゆっくりと言葉を続けた。
『…俺は、ヒナに真面目になったとこ見て欲しかったんだ。
今日の式も成功させて、ヒナに褒めて貰いたかったから。』
「―――ッ!」
じゃあ今まで遅くまで頑張っていたのは、あたしのために?
あたしがみぃのこと、“チャラい”なんて言ったから…?
『ヒナに頼らずに課題こなして、もちろん一緒に進級してさ。
今日なんか、呼び出されたと思ったら、あの担任が褒めてくれて。』
“ヒナのおかげなんだ”と。
みぃはいつものように笑った。
その瞬間、先ほどまでとは違う涙が溢れて。
ただ、安心したんだ。
ずっと不安だった。
今日一日が、どれほど長かっただろう。
「…みぃ、好きだよ…!」
飛びついたみぃの胸で、あたしは子供みたいに泣いたんだ。
いつかの夏の夜みたいに、みぃはあたしの背中をポンポンと叩きながら。
『…てかヒナさん。
じゃあそのチョコ、誰のためのですか?』
「…馬鹿みぃのためのだよ…」
“最初から”と、消えそうな声で呟いた。
『…そっか。
じゃあ、すっげぇ嬉しい。』
「…もっと喜びなさいよ…」
『…いや、正直脳みそが動いてないってゆーか。
何気に心臓の音がヤバいんですけど…。』
やっぱ、馬鹿だ。
チャラくて、猫みたいでダメな男。
あんまり変わってないその印象だけど、いつの間にかあたしは、
そんなみぃのことが大好きになっていた。
微かに香る、チョコの匂い。
甘くて優しい、みぃみたいな香りだね―――…
END
戸惑うあたしに、みぃはゆっくりと言葉を続けた。
『…俺は、ヒナに真面目になったとこ見て欲しかったんだ。
今日の式も成功させて、ヒナに褒めて貰いたかったから。』
「―――ッ!」
じゃあ今まで遅くまで頑張っていたのは、あたしのために?
あたしがみぃのこと、“チャラい”なんて言ったから…?
『ヒナに頼らずに課題こなして、もちろん一緒に進級してさ。
今日なんか、呼び出されたと思ったら、あの担任が褒めてくれて。』
“ヒナのおかげなんだ”と。
みぃはいつものように笑った。
その瞬間、先ほどまでとは違う涙が溢れて。
ただ、安心したんだ。
ずっと不安だった。
今日一日が、どれほど長かっただろう。
「…みぃ、好きだよ…!」
飛びついたみぃの胸で、あたしは子供みたいに泣いたんだ。
いつかの夏の夜みたいに、みぃはあたしの背中をポンポンと叩きながら。
『…てかヒナさん。
じゃあそのチョコ、誰のためのですか?』
「…馬鹿みぃのためのだよ…」
“最初から”と、消えそうな声で呟いた。
『…そっか。
じゃあ、すっげぇ嬉しい。』
「…もっと喜びなさいよ…」
『…いや、正直脳みそが動いてないってゆーか。
何気に心臓の音がヤバいんですけど…。』
やっぱ、馬鹿だ。
チャラくて、猫みたいでダメな男。
あんまり変わってないその印象だけど、いつの間にかあたしは、
そんなみぃのことが大好きになっていた。
微かに香る、チョコの匂い。
甘くて優しい、みぃみたいな香りだね―――…
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