初彼=偽彼氏
「…なあ。あんたが立花 姫季だろ?」
「――そうですけど。ってかなんであたしの名前…。っていうかあなたは誰…?」
色々と疑問点が出てきたけれど。とりあえず、名前をと思って聞いた。
「……あぁ、あんたを呼び出した本人」
「…―あなたが、D組の――…?」
「…そっ。ま、とりあえず移動~♪」
「え――、ぃや…ぁの…っ、…まっ…」
言いたい言葉を発するよりも前に"彼"にあたしの手を捕まれ、強引に手を引いて、"彼"はあたしを連れ出した。急なことで抵抗することなんか出来なかった。
……でもちょうどその時廊下には人が一杯いて。
一人は彼に強引に手を引かれ。もう一人は人混みをお構いなしに彼女の手を引き無理矢理連れ出している。
そんな状況見れば誰だって、好奇の目を向ける―…。
そんな視線を向けられたのは、生まれて初めてで。耐えることなんて出来るハズもなく、あたしはその視線に逃げるように俯いて"彼"に着いて行く――
……けれどその"彼"はそんな視線なんかお構いなしとでも言うかのように、視線だらけの人混みを掻き分け廊下を進み、多分目的地であろう階段横の空きスペースへあたしを連れて来た。