【超!短】何か変な話
それでも強く勧める蔵之介に、女は申し訳なさそうに深々と頭を下げて鍋を美味そうに食べ始めた。




蔵之介は不安から解放されて喜ぶと、女と一緒に鍋を食べた。

美しい女との会話は、胸が弾むように楽しい時間だった。


「お前さんを雪女だと思ってのう。」と蔵之介が笑うと、

「雪女なんていませんよ」と女もクスクス笑った。


二人はお腹いっぱい食べると眠りについた。












――その日の夜中――




シュッシュッ


ゴシゴシ


シュッシュッ


ギィギィ



辺りには金属の擦れるような音が響いていた。



その音の中心に居たのはあの美しい女だ。



長い包丁を、砥石(トイシ)に勢いよく擦りつけて研(ト)いでいる。



女は研ぎ終えた包丁を持って、ぐっすり寝ている蔵之介の前に立つとこう言った。



「こんな大雪の日に、山姥(ヤマンバ)が訪ねて来るとは思うまい。」





END
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