男装人生
兄弟の話題になって、嫌な予感はしていた。
「怜悧は兄弟いるのか?」
やっぱそうきたか。
圭也の質問にグッと言葉が詰まる。
本当は話したくない。
いないことにしたって、バレはしないと思うのに正直に話してしまう私は馬鹿だ。
「・・・あぁー、・・・1つ下の妹が。」
出来のいい、妹がね。
忘れかけていた感覚が私に襲いかかる。
ぎゅっと胸を締め付けられてるかのような鈍い痛み。
「お、一緒じゃん。妹可愛いだろ?」
そんなこと聞くなよ。
ドキドキと心臓が嫌な音をたてる。
大丈夫、大丈夫。
こんなに遠くにいるんだから。
圭也はなにも答えない私を気にもせず話し続ける。
「怜悧の妹。見てみてー‼」
やめて
「写真とか無いのか?」
やめてやめて
「ねぇ、怜悧が困ってる。」
よかった。
助けられた?
いつからか止めていた息をホッと吐きだす。
「そうなのか?ごめん。あ、鈴音は弟がいるらしいぞ。いいよなぁ~オレ、弟もほしいわ。」
「は?あんたが兄ちゃんなんて絶対嫌だ。」
鈴音がボソッと呟く。
ブッッ‼
思わぬ鈴音の一言に、吹き出してしまう。
すぅーっとウソみたいにさっきまでの感覚が消えていった。
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