男装人生
落ち着きなく宙を泳ぎだす視線。
何か言いづらいことなのか、"そうじゃなくて"から続かない。
「なんだよ。」
「たまには…」
「?」
「たまには僕の言うこと聞けよ‼」
え⁉
勢いよく飛び出した言葉に目を丸くする怜悧。
「怜悧の為に僕がここまでしてるんだから、たまには聞いてくれてもいいだろ?少しは安心させてよ。・・・他のクラスになんか行かせるか。」
最後の絞り出したような声にジーンと胸が震える。
いつだって怜悧のことを考えてくれていたのに。
疑ったりして私ってば馬鹿だ。
光ってそういうヤツなんだ。
そのお願いも私の為じゃないか・・・
「果物なら、食べれるんじゃない?」
「・・・うん。」
「無理はしなくていいから。」
「うん。」
光はスッと立ち上がりドアに向かって歩いていく。
「行くよ。」
「わかった。」
光の後を続く。
あれ?
身体が軽い。
先ほどまでの気持ち悪さが消えている事に気づく。
あぁそっか。
今は光のおかげで緊張もプレッシャーも吹っ飛んでしまったんだ。
光に続き、部屋を出る。
壁にもたれ、心配そうな表情で圭也が待っていた。
だが、軽い足取りの私を見て安堵の表情に変わるのだった。
.