男装人生
樹里ちゃんから持ってきてもらった写真は4才から15才までだった。
やっぱり無表情の写真以外は無い。
凛は普段、大きく表情が変わることは無いが、微笑んだり、困ったり、不思議そうな表情をしたり、ちゃんと変化は分かる。
樹里ちゃんが持っている写真はすべて、ずっと仮面を被ってるかのようなそんな写真ばかりだ。
こんな沢山あるのに、無表情しか写らないなんてある意味すごい。
「凛さまは・・・いつもこんな感じよ。」
「うそだぁー・・・?」
「樹里の前では特に。でも、ご両親の前では、柔らかい表情しているわね・・・」
下を向いてい樹里ちゃんの表情は見えない。
少し声が震えて聞こえるのは気のせいだろうか?
なんて答えればいいのだろう。
好きな人に笑いかけてもらえないなんて辛すぎる。と思う。
しかも許婚だし・・・
最初、樹里ちゃんが何かしてそうなったのかと思ったのだが、写真を見る限り幼い頃からそうみたいだ。
幼い頃からそうってことは、生理的にダメとかそういう事だろうか?
あんなに綺麗なんだけどな・・・
「怜悧、お願いがあるの。」
顔を上げた樹里ちゃんは真顔だった。
泣いてなくてよかった。
「なに?」
「樹里、高等部に入ってからの学園での凛さまの写真を一枚も持ってないの。」
「へぇ~意外。」
「一度、撮りに行ったのだけど、高龍学園って高等部だけ異常にセキュリティーも厳しくて・・・断念したわ。」
中等部の頃は簡単だったのにと悔しがっている。
樹里ちゃんの行動力に脱帽だ。
「部外者の樹里には出来ないけど、生徒の怜悧なら撮れるでしょ?撮ってきてもらえないかしら。」
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