男装人生
一瞬、樹里ちゃんを置いていきたくなったが圭也を1人で面倒見きれる自信もなく、私達は早速観光するために出発した。
まずは樹里ちゃんおススメの町を見渡せる展望台に案内された。
そこそこ雑誌に取り上げられるくらい有名な場所みたいで、休日ってのもあってか人がごった返している。
樹里ちゃんとはぐれないよう早足で後をついていく。
圭也は私の服の裾(スソ)を握っているから、はぐれることはないだろう。
「あそこでアイスでも買って、食べながら景色を眺めましょ、って、貴方たち・・・何してるの。」
「え?ついてきてる。」
「とくに何もしてないぜ‼」
空いている手を使って圭也と一緒に親指をたてる。
「そうじやなくて。恥ずかしくないの?」
「へ?」
間抜け面で樹里ちゃんを見る圭也。
樹里ちゃんが言ってるのはきっと裾を握っている手の事だと思う。
圭也のことだから気にしてないのだろう。
怜悧も最初は振り払おうかと思ったが、あっちこっち行かれるよりはマシだろうと考えたのだ。
だが、傍から見たら大の男子高校生が同性の裾を握り誘導されているのもおかしな話かも知れない。
「怜悧、貴方の事よ。」
「え?俺っ⁉」
「貴方が引っ張っているつもりでしょうけど、圭也くんがあちこち動き回る少年を抑えてるようにしか見えないわよ。」
圭也に抑えられている・・・
そうだ、圭也は黙ってればクールチャラ男なのだ。
クールなのにチャラ男なんて意味がわからないけど、クールチャラ男なのだ。
背も高いし・・・
ぷっと笑っている圭也の手を振り払う。
くっそぉ~腹立つ~
凄く心外だ。
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