男装人生



「怜悧に好きな人ができたら必ず樹里に教えるのよ。」



金色の髪に邪魔されて、樹里ちゃんの表情は見えない。



「うん。」



「・・・反面教師になるんだから。樹里のやってしまった失敗談、聞かせてあげるわ。」



「うん。」




「きっと、怜悧は上手くいくんだから。」



「うん。」



「そしたら、樹里も絶対、幸せになるんだから。」



幸せって感染するのよって、そう言い、髪をかきあげた。
キレイなブルーの瞳にはなにも浮かんでなくてホッとする。

何度も繰り返し思っていたことに違いない。
10年も考えさせられる時間があったのだ。



まだ、恋がなんなのかさえわからないけど、幸せが感染するのなら誰より幸せになって、早く樹里ちゃんに幸せがうつってほしいと切実に思った。





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