男装人生


教室のドアを開けると、机に向かう小さな姿が目に入る。


外の陽射しに照らされ、逆光で顔がよく見えない。

時折吹く風にカーテンが大きく舞い、小さな身体を隠しては再び現れた。



「・・・鈴音?」


あぁ、鈴音だったのか。
光の呟きでやっと正体を知る。


「鈴音ー、こんなとこで何してんの?」


怜悧の声で、鈴音はサッと顔を上げた。


「勉強。」


「えぇ⁉テスト終わったのに⁉」


私なんか、やっと勉強漬けから抜け出せるって喜んでたのに。
鈴音は凄いな~


「1位を狙ってるから。」


「えぇ⁉マジで⁉」


うわぁ~
光にまた鈴音を見習えって言われそう・・・


笑いながら鈴音に近づく。

だが、鈴音に近づくにつれ怜悧の顔から笑顔は消えた。

光も何も言わず鈴音の前の席へ座る。



「・・・それ、どうしたの?」


大体想像つくがそう言わざるを得なかった。


「・・・逃げ遅れた。」



全身が薄汚れて、いたる所に痛々しい青痣(アザ)ができている。
泣いたのか充血して真っ赤になっている大きな瞳を再び机に置かれた用紙に落とす。


この前は普通に帰ってきていたのに、どうして・・・



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