男装人生
「きーは言い出したら聞かないんです。」
遠慮がちに玲李の片方の手を取る。
そして、安心させるかのように優しい笑顔を向けて言った。
「行きましょう?今日から私達は友達です。」
友達。
その言葉に全身が喜びで震えたのが分かった。
きーちゃんが急かすように引っ張る。
二人が片方の空いた手で扉を開けて、薄暗かった部屋に光が差し込んだ。
見慣れた廊下も外の景色さえ、何かが違って見えた。
「玲李っ‼あの部屋は?」
「あの部屋はお父様の書斎。」
「よし、行こう‼」
「こらっ、きー‼ダメですっ‼」
「うっさいなー。みーのケチんぼ~」
ケラケラと楽しそうに笑う。
「ケチじゃありませんっ‼きーが悪いことばっかりするからっ」
「あーあ、そんな鬼みたいな顔してー、んじゃ鬼ごっこね?」
よーいスタートと玲李の手を離し、長い廊下の先まで走るきーちゃん。
「鬼ごっこって、もう‼勝手なんですから‼ん?みーが鬼?」
玲李とみーちゃんは顔を見合わせる。
「私達手を繋いでるのに?」
思案顔だったみーちゃんは段々面白くなったのか笑い出す。
「ふふっ」
いつの間にか玲李まで笑っていた。
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