男装人生



みーちゃんが来てくれる日曜日になり、玲李は急いで支度をする。
大分小さくなったお気に入りの黄緑色のワンピースを着て、みーちゃんが好きなお菓子を用意する。

最近では夕方に来て1時間ほどで帰ってしまうのだが、今日は朝から待ちわびていたチャイムが鳴った。



ドタバタしながら玄関へ走る。

途中、"お嬢様、廊下を走ってはいけませんっ‼"と明李の家庭教師の声がする。

だが、そんな声など無視して勢いよくドアを開けた。



みーちゃんは一瞬驚いた顔をしたがすぐにクスクスと笑い出した。



「玲李は朝から元気ですね。きーみたい。」


表情は柔らかい。
だけど・・・


玲李はみーちゃんの顔をジッとみる。
目が赤い・・・。

また泣いたのだろうか?

昔から泣き虫だが、最近本当に目を腫らしていることが多い。


みーちゃんの悪い所は、泣き虫な癖に絶対に理由を教えてくれないことだ。


玲李は辛いとき、悲しいとき、泣きたいときはいつだって、みーちゃんを頼ってきた。
なのに、一度だってそう言う姿を見せてくれない。


1人で解決して、泣きはらした目で帰ってくるのだ。



「私は大丈夫なので、そんな顔しない下さい。」


それに、人一倍人の感情に鋭い。

今もすぐに玲李の考えを読み取ってしまった。


まぁ、玲李は分かりやすいらしいが、分かりずらい人の感情まで読み取ってそれに応えようとする。

きーちゃんが言っていた。
みーは将来絶対ハゲるって。

そしてこうも言っていた。
面倒なことを無視できない面倒なヤツだって。


わかるような、わからないような・・・。


.
< 299 / 407 >

この作品をシェア

pagetop