男装人生
「入らないんですか?」
「あっ、今日はお庭でお菓子でも食べようかと思って。」
母自慢のバラの庭園に向かって歩き出す。
玲李の家は父親が学校経営など色々な事業をしていて、裕福な方だ。
都市から少し外れているのもあって敷地がかなり広く、ほとんどを母の趣味の庭園にしていたのだった。
みーちゃんと外にいるのは久しぶりかもしれない。
きーちゃんと違い、読書や室内で遊ぶことを好むからだ。
眩しそうに目を細め、玲李の後をついてくる。
「たまには外もいいものですね。」
「でしょ?お天気もいいし、今丁度バラが開花したところで凄く綺麗なんだから。」
嫌がっていないことに一安心し、みーちゃんに笑いかける。
すると、みーちゃんはいつものように"可愛いですね"と頭を撫でてくれた。
みーちゃんは同い年なのに、昔からお姉さんのように振る舞うのだ。
だけど、玲李はその優しい表情と仕草が大好きだった。
一緒にティーセットの並んだテーブルにつく。
お菓子を取り分けながら、つもりつもる話をした。
1週間も会ってなかったし、なんてったって親友だから。
みーちゃんは紅茶を飲みながら、にこやかな顔で聞いていてくれる。
「そういえば昨日、きーちゃん来たんだけど‼」
丁度、昨日の話になった時だった。
少しだけ固まるみーちゃんに気付かず、話を続ける。
「びっくりしたよ。バッサリ、思い切ったよね?」
「きーは、勝手なので・・・」
玲李は様子のおかしいみーちゃんにまだ気が付かない。
「まさかショートカットにするなんて。美人だと思ってたけど、ショートにしたらなんだかカッコイイ感じになったよね。」
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