男装人生


「みーちゃん・・・」


熱いものがこみあげてくる。
今までのみーちゃん、きーちゃんとの思い出は楽しいことばかりだ。


みーちゃんにとってもそうだと思っていた。
涙に腫れた顔もここに来ると、笑顔に変わるから。


そうだと思い込んでいた。


本当はどうなのだろう。

大きな瞳に溜まった涙が地面に落ちた。



真実が知りたい。


玲李は走り出した。

茨の迷路道を全力で走る。


止まらない涙と鼻水のせいで、視界が悪く、何度も茨に突っ込んだ。

だけど、ここで止まったらダメだ。
見失ってしまう。


育ったバラはまだ10才そこらの子供には大きかった。
かろうじて、みーちゃんの肩と頭が見える。


「ヒック・・ヒック・・・びーじゃーんっ‼」


懸命に追いかけた。


「びーじゃんっ待っでぇ‼」


今度は振り払われても絶対に離さないつもりだった。
みーちゃんとの距離、数センチ。



「びーちゃっ」


ズサッッ―――ッ


何もないところで思いっきり転んでしまった。
全身に痛みと悲しみが広がる。


「うわーーーーーん‼」



後少しだったけれど、もう立てなかった。
真実を知るのが怖かったのかもしれない。


物心ついてから初めての大泣きだった。

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