男装人生



"楽でしょ?"


希夜の言葉が思い起こされる。
それと同時にモヤモヤが私の中に広がった。

ずっと気にしていたのに、すっかりその時の記憶が抜け落ちていた。
多分、思い出したくなかったのかもなぁ。


ほんとは考えるのなんて放棄して、楽になりたかった。
だけど、それじゃ私自身がダメらしい。

気持ちが納得いってないのだ。



「俺はつまらなそうにしてる希夜が一番怖いですけどね。思い詰めている証拠ですから・・・希夜も大変なんですよ。」


「それは、あるな。あんなのが兄貴じゃ親の期待も高いだろうしな・・・」



親の期待?



......。




"応えなくていい"


あの時希夜は言った。
私はてっきり私を送り込んだ親の事だけを言っているものだと思っていた。
それで1人モヤモヤなんかしたりして。


実は自分の事も重ねて言ってたんだろうか?


あぁ、そうか・・・


だから、私が元気がないように、希夜も元気がないのだろうか?



だって、もう気づいてしまった。


私はホントは"応えたい"んだ。


認めてほしい。



希夜だってそうなんじゃないか。



そうじゃないとおかしいよ。
私のことが表上片付いて、キレイさっぱりなのに元気がないなんて。



希夜に言わなきゃ‼
私は応えたいって‼

希夜に阻まれても、上手くいかなくても、努力したい。

楽なんかしたくないんだ‼



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