男装人生



「圭也。どこか行くの?」


無言で部屋を出ようとする圭也の腕を架衣斗が掴んだ。
立ち止まり、思い詰めたような顔でこちらを振り向く。


「・・・ごめん。・・・俺、もう、ここには戻らない。」


その場にいた全員が凍り付く。
ふざけた冗談じゃないかと圭也を見るが、その瞳は真剣だった。


「今から転入できる実家近くの高校の試験を受けてくる。」


「なんで⁉なんで転校するんだよ。」

思わず玲李は圭也の傍に駆け寄りスーツの袖(ソデ)を握る。
家族が大事で傍にいたいから転校を考えているんだと思うが、転校までする必要があるだろうか。
皆で考えれば他にも方法は見つかるかもしれないのに・・・


「俺がここにいる意味ないだろ。」


何を言ってるんだろう。
高龍学園は進学校で大学までここを卒業できれば将来を約束されたようなものだ。
家業を継ぐ生徒も多いが就職先も苦労しないだろうし、裕福な生徒も多い。人脈を広げるチャンスだ。
意味なんて探せばいくらでもある。


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