男装人生
2章

帰る場所~keiya-side~



慣れ親しんだ家が崩される様子を見守る。


小さな一軒家に親父、お袋、ばぁちゃん、うるさい姉3人、そして俺。
急にサラリーマンを辞め1人自営を始めた親父のおかげで生活は苦しく安定しなかったが7人で仲睦まじく暮らしていた。

そんな生活が変わり始めたのは小学6年生の頃。
全ては親父の一声から始まった。


「みんな、喜べ‼新しく家を買ったぞ。」


最初はまたおかしなことを言いだしたと思っていた。
そんな金がどこにあるんだ。
家族から一斉にブーイングを受け、まてまてと制す。
そして、立ち上げた会社の事業が成功したことを告げられた。

それと同時期にお袋の妊娠も発覚した。

いろいろなことが180度変わっていく。


まさか自分たちの家が大金持ちになるなんて思いもしなかったし、また、自分がお兄ちゃんになるなんてないと思っていた。


「圭也、お前は高龍学園へ行け。長男なんだからしっかりしてもらわないとな。」


本来なら普通に友達と同じ公立の中学校に入って、何も変わることない毎日が続くはずだった。


新しい学校。

新しい家。

新しい家族。

別に欲しいなんて思ったこともなかった。


小学校卒業式の日。
慣れ親しんだ家は崩され、知らない人の家として建て替えられる予定だ。

そしてその日俺達は知らない町へと引っ越した。


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