男装人生
「かぁさーん!白い靴下が無いっ!」
まだ、荷ほどきが済んでいない為部屋には段ボールが積まれ、どこに何があるのか分からない。
姉たちはもう終わったらしいが、俺は荷ほどきする気力すら湧かないのだ。
生まれたばかりの赤ちゃんを抱え、部屋の有様を見たお袋は呆れた顔をしている。
「もう。まだ片付けてなかったの?そんなんじゃ見つかるわけないじゃないの。」
「誰も手伝ってくれないから。」
「赤ちゃんじゃないんだから、それくらい自分でしなさい。」
自分が悪いのは分かるのだが、その言葉にムッとする。
「うるせぇ!俺裸足で行くから。」
「こらっ、圭也待ちなさい!・・・・反抗期かしら・・・」
あの頃は何をするにもイライラしていた。
うるさい姉たちに。
暴力的なばぁちゃんに。
赤ちゃんに付きっ切りなお袋に。
勝手に何でも決めてしまう親父にも。
不満と先の見えない不安な感情を持て余していた。
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