男装人生

高龍学園は高級住宅街を抜けた先にある。
自宅から10分もかからない場所だ。


走ってきたはいいが、幼小中大、同じ敷地内で壮大(ソウダイ)な所有面積を誇る高龍学園のたたずまいに校門を前にして足がすくんでしまっていた。

他の生徒はほとんど自家用車で送ってもらってきているようで、高級車が目の前をどんどん通り過ぎていく。


「無駄にデカすぎだろ・・・」


前に通っていた小学校の100個分はありそうだ。
自分にはこんな学校、場違いじゃないだろうか。
そんな思いが渦巻く。


なんとか教室へと向かい、入学式の説明を受ける。
クラスは成績が一番良くないDクラスのようだ。


分かっていたが周りは知らないやつばかり。
中等部から入学する生徒は珍しいようでじろじろと見られる。



「・・・成り上がりか。学園に入る為に相当金を積んだんだろうな。」


隣に座っていた細い眉に切れ長の瞳の全体的にひょろっとした印象の少年がボソッと呟いた。
横目でせせら笑っている。
どこか爬虫類を思わせる無機質で冷たい瞳に背筋がぞくりとする。


登校したばかりだというのにもう帰りたくなった。
周りを見渡せば、その少年の発言にニヤニヤ笑う感じの悪い奴らばかりだ。


事実だが面と言われると気分が悪い。


「藍咲。どうした?」


突然立ち上がり、たたずむ俺に先生が声をかける。


「具合悪いので保健室行っていいっすか。」


「あぁ、そうか。・・・場所分かるか?」


もちろん仮病だ。
先生は中等部から入学したのを知っているから気を使っているのか、さっきまでピンピンしていた俺にも優しい。

家族にバレたらやばいと分かっているが、教室を抜け出した。


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