男装人生



保健室など向かうはずもなく、まずは校舎を出ることにした。

外に出れば建物沿いを歩く。

もう頑張ったって教室には戻れないだろう。
今自分がどこにいるのかさえわからない。


額に汗が浮かび、歩き続けることに嫌気がさしてきたころ、今頃入学説明を受けいるはずの生徒の姿が見える。

上の学年かとも思ったが制服のブレザーの襟の部分が1年生を示す緑色だから間違いない。


自分と同じサボりだろうか。
事情も何も知らないが、ちょっとだけ親近感が湧く。


その生徒はまだ圭也には気づいていないようだ。
懸命にどこか遠くに目を凝らしている。


圭也はそっと距離を縮め、少年の横顔を観察する。


遠くからは気づかなかったがその少年の容姿に息をのんだ。

華奢な体付きに、特徴的な大きなネコ目。
長めの色素の薄い赤茶色の髪の毛が風にキラキラとなびいて、一見女の子みたいだったのだ。

不本意だがちょっとだけドキッとしてしまった。


このまま気づかれず立ち去るのがなんだか惜しくて、また距離を縮めた。
もういつ気づかれてもおかしくない。

少年は圭也の気配に気づいたのか、こちらをチラリと横目で見た。

本当にビックリしたようでこちらを横目で見たまま2,3秒大きな瞳を瞬かせている。
そして思考が追いついたのか、瞬時に後ろを向きこちらを振り返った時には赤メガネをかけていた。


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