男装人生


春風に腰のあたりまであるウエーブした長い黒髪がなびく。
どこか遠くを見つめる切れ長の愁(ウレ)いを帯びた瞳に長い睫毛の影が差して凄く綺麗だ。


って、え⁉
誰だ?

希夜でも、八巳でもない誰かがいる。


なんで男子校に女の子が・・・
あ、でも、ズボン穿いてる・・・
華奢(キャシャ)でなんだか儚(ハカナ)げで・・・

こちらに気付いたその子が軽く微笑む。
俺の顔はそれだけで真っ赤に染まってしまった。
こんな美人めったに会えないだろう。

どっちなんだ⁉



「藍咲 圭也くんですね?」


「は、はいっ!」


「私は希夜の友達の竹吉 恭一です。よろしくお願いします。」


「そか・・・よ、よろしくな。」


さすがにあの名前は男だろう。
何とも言えない気分になる。
するとクスクスと笑い出した。


「こんな髪じゃ勘違いしますよね。」

首を傾げ悪戯(イタズラ)っぽく覗きこんでくる恭一の仕草に思わず顔を覆(オオ)ってため息をこぼす。


女の子にしか見えねぇ・・・
髪だけの問題じゃないと思う。


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