男装人生
「あ、きた!」
悩む俺をよそ目に希夜は急に立ち上がった。
そして壁の隙間に向かって忍び足だ。
そこには何者かが隙間から侵入しているところだった。
俺は思わず声を上げてしまいそうだったがなんとか堪(コラ)える。
足から入ってきたせいで希夜と俺の存在にまだ気づいてない。
身長と身体つきは希夜と似たような感じだ。
帽子からはみ出した金髪がやけに目立つ。
その侵入者がやっと隙間から抜け、ふうと一息ついたとき、希夜の手ががっしりとソイツの腕を掴んだ。
「ひぃっ‼」
「ここで何をし て い る の か な?フフフ」
こちらからは侵入者の顔は見えないがきっと青ざめていることだろう。
見ているこっちがドキドキしたくらいだ。
信じていなかったが、希夜の言う通り侵入者はいたようだ。
希夜が腕を握り直そうと手を緩めたその時、不意を突き侵入者が走り出した。
希夜からチッと舌打ちが聞こえる。
「放課後ここにきて!」
「ちょっ!おいっ!」
それだけを言い残し侵入者を追って行ってしまった。
結局、俺の返事を聞くことなく決定してしまったのだった。
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