男装人生
「ご、ごめんな?うるさくて・・・」
希夜の表情を見てやっぱり連れてこなければよかったかもと後悔した矢先、希夜がフッと噴き出すように笑った。
なんだ?
俺は驚きのあまり、まじまじと希夜を見てしまった。
「い、いや・・・君たち、流石家族だね。」
「え?」
「いいんじゃない?」
「はっ?」
そんなこと言うなんて珍しい。
「・・・うるさいの嫌いかと思ってた。」
「まぁ嫌いだけど、うるさいのは君で慣れているしね。」
「ん?なんか腹立つな‼」
「それより、君の家族はなんだか温かくていいね。羨ましいよ。」
「そうか?」
「違う?」
「傍から見ればいい家族に見えるのだろうけど、全然そんなんじゃねぇよ。親父は勝手に色々決めるし、ネェちゃん達は煩いし、ばぁちゃんは怖いし、お袋は・・・あぁ、考えただけでこんな家族嫌だ‼俺の事なんか何一つ考えていない」
言うつもりなかったのに、いや、言いたくても言えなかったのに希夜の手にかかると、貯めこんでいた不満がスラスラと口に出てくる。
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