男装人生
「ふーん。まぁ、どの家庭にも不満はあるだろうけど、お姉さん達は君が心配で仕方ないように見えたけど。ご両親もおばあさんも俺が君の友達だからあんなに歓迎してくれてるんだと思うよ。愛されてるね。」
まさか希夜がこんな事言うとは思わなかった。
学園の事になると熱心だが、基本、家族とか他人に対してはドライで無関心なヤツだと思っていた。
自分の家族を肯定してくれる希夜に嬉しさが込み上げる。
そして今までの反発心が魔法みたいにストンと落ち着いた。
もう不満が無くなったわけではないけれど、希夜が言うんだし、ま、そんなものなのかとさえ思えてくる。
俺って相当単純なのかもしれない。
だけど、それだけ希夜の言葉には説得力があったのは確かだ。
愛されるねと言われてなんと答えたらいいのか分からず、視線を彷徨わせる。
「お、オレ、トイレ行ってくる‼」
そして、その場の空気に気恥ずかしくなり、部屋から飛び出した。
希夜の目にはそう見えるのか。
温かい家族。
生まれて初めてなんだか誇らしく感じることができた。
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