男装人生



ずっとここにいるわけにもいかないよね。


幾分冷静さを取り戻した私はとりあえず前にいる人の後を付いていくことにした。




寮までの道のりは長そうだ。
目指すところに視線を向けるも、小さくなった生徒たちの後ろ姿と桜並木以外は見当たらない。
春のさわやかな風にひらひら舞い落ちる花びら。
ぽかぽかした陽射しに…

なんだか眠くなってしまいそうだ。


バックを抱え直しぼんやりと前の彼の後頭部を眺めながら歩く。

色素の薄い赤茶色の髪の毛が太陽の光でキラキラと反射して見上げている感じの私は眩しくて目を細める。

男の子の髪の毛ってこんなにきれいなものなんだろうか。
女学校しか経験のない私には年の近い男の子の情報がまるで無い。

前に足を踏み出すたびにさらさらと揺れる。

きっと猫っ毛で柔らかいんだろうな・・・

少女まんがにでも出てきそうな男の子だったらどうしよう。
さっきまでの最悪な気分も忘れ心躍らせる。


それからずっとキラキラした髪の毛が気に入ってしまい、眩しいのを気にせずに眺め続けた。

何故?

よく分からない。
けど惹かれたんだ。

小さな宝石を見つけた気分。




馬鹿だよね・・・


こんな事しなければよかったのに・・・


最近の私はついてない。




まさかあんな危険な奴だと知りもしなかったんだ。




これが奴との高校生活を揺るがす悪縁の始まりだったなんて。



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