夏の幻
「さてと、そろそろ出るか?じゃあ行って来るよ」

 台所に居る母に言い出て行く恭介

「気をつけるのよ!」

 母が言う

「この町も久しぶりだな」

 歩きながら独り言を言う

「おっ!恭介じゃないか!久しぶりだな!」

 恭介の同級生が偶然恭介を見つけて声を掛けて来る

「おおっ!久しぶりだな田町」

 恭介は返す

「いや~!お前がこの町を出て都会に行くって聞いた時は
 寂しかったよ、親友で幼馴染だったからもう遊んだり
 出来ないなってな」

 寂しそうに言う田町と呼ばれる友人

「悪いな、此処じゃあろくに稼げないからな
 都会に行ってお金を沢山稼いで少しでも
 親を楽させたいからさ、お金沢山貯めて
 実家を改築して一緒に住むんだ!」

 真面目な顔して言う恭介

「お前は偉いよな、俺なんてやりたい事が見つからないから
 バイトで生活して夏祭りに行くしがない人生だぜ!」

 ため息交じりで言う田町

「やりたい事が無くても自立出来てれば立派だと思うぜ?」

「お前は本当に良い奴だな!俺頑張るよ」

「ああ、頑張れ!」

「おうっ!じゃあ待ち合わせしてるからまたな!
 向こうで会えたらまた話そう!」

 そう言うと走っていく田町

「ふぅ」

 一息入れて歩き出す恭介
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