キケンな実験室-白衣の王子様-
あたしの不注意で手から滑り落ちた試験管のひとつは、机の上で砕けた。
その破片があたしの指先に飛び、皮膚を傷つけた。
「……痛っ」
あたしがそうつぶやくと同時に、実験室と準備室をつなぐドアが開く音がした。
それはもう響く大きな音で。
「どうした!」
指を押さえるあたしに先生が駆け寄る。
白衣がはためく。
先生の髪が乱れて、その距離は縮んでいく。
その様を、あたしは
「先生って意外と早く動けるんだ……」
ってどーでもいいことを考えながらぼうっと見ていた。
先生がさっき注意した通りになっちゃった。