キケンな実験室-白衣の王子様-
「怪我……ないですか」
心配を深くはらんだ声色は、またあたしの心をかき乱す。
指先にわずかににじむ血を隠すように、あたしは手を握る。
「だ、大丈夫です」
なんか怒られる気がしたから。
目の前の白衣を着たマッドサイエンティストに。
あたし、先生の言うこと聞かなかったし。そんでもって怪我したから。
だけど指先、痛いよ。
やっぱり。
「大丈夫じゃないでしょう」
先生はため息をひとつ吐く。
やっぱ怒られる!
そう思ったのと同時に、あたしの指先を生ぬるく湿った感触が包む。
先生がグーにしたあたしの手を開き、その指先をぱくりと咥えた。