執事と共に日常を。
「言葉ではわかっている。けれど、深い部分では彼女の死を理解していない」


思ったよりも、ずっと彼は深刻だった。


「それなのに、彼女との来た場所や彼女に似た人を見ると溢れ出す感情が抑えられないんだ」


彼は、恵理夜の手をすり抜け橋の欄干に顔を伏せた。


「苦しい……」


ようやく、自分の感情を吐露できたようだ。


「苦しくて、耐えられそうにない」


掛ける言葉もなく、手を差し伸べることも出来ず恵理夜は立ち尽くしていた。
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