携帯からできる一つの愛
「せっちゃん、今降りるからまって!」
そう言った後急いでいる為窓を閉めればピシャリと荒々しい音が響いた
初日は入学式だけのため、まだ軽いスクールバッグを手に持てばどたどたと階段を降りる、台所の方には行かずに玄関まで行けば母に一言だけ"行ってくる"とだけ聞こえるように伝えた
私が座れば慣れない革靴を履いてる途中に、台所から母がやってきた
「あんた、朝ご飯食べないの?」
「いいよ、食べたら遅刻するみたいだし」
「にしては早すぎる時刻じゃない?」
母は玄関に飾ってある時計に視線を通した後にそう言葉を放った
「でもせっちゃんの兄ちゃんが行ってるんだし、仕方ないでしょ。じゃまた後で会おうね?」
革靴を履いた後に立ち上がり母がいる方、後ろ振り向けば、リビングからまた1人何かがやってきた
「パパも後で叶美の晴れ姿ちゃんとビデオに撮るからね」
新聞を片手に持ちながら愛でるような目で私に視線を送りつけた。
「やだお父さん、やめて」
「あ、ちょっと叶美」
「え?」
私が嫌々と話してる最中にお母さんに胸元を見られ何か言われそうになったが、階段を降りる音がどたどたとまた響き、パジャマ姿の弟が現れた
「お姉ちゃんがんば~っ!」
私は家族全員に見送られる事に気づくと恥ずかしくなれば、顔を真っ赤にしつつ小さな声で"行ってきます"と呟いてすぐに家をでた
「かにゃ、何だか家の中騒がしかったね」
「戦争に行く前の軍隊みたいでなんだか嫌だったし」
「それは流石に…」
あははと苦笑いするせっちゃん、いいよもういいしどんどん苦笑いだのなんだのすればいいじゃんか
そういえば私、誰かに呼び止められたような気がする…。
「じゃあかにゃ、遅刻しちゃうから行こうよ」
「え?あ、うん」