妖魔06~晴嵐~
秋野は再び笑う。
「でもね、私達の間に主張のやり取りは必要ないわ。あなたの主張は極端だし、私も聞く耳をもてないの。それに、あなたは私達の話を聞こうとしない。これほど、無意味なやり取りはないわ」
ジャックは無言のままで、引き金を引いた。
ジャックに時間を消費する気はない。
しかし、弾丸の軌道上に秋野の姿はなかった。
「闘争という欲望は人を変えるのね」
ジャックの背後に立つ秋野。
妖魔という生き物は、人間よりも身体能力が高い。
しかし、いくら速くても瞬間移動が出来るほどの身体能力はない。
「ルール」
「遅い」
背後からジャックを貫く手刀。
ジャックの瞳が閉じようとしたところで、秋野の腕をつかむ。
「『触れると崩壊する』」
そう、独り言のように口ずさむ。
心臓が止まろうとしていた。
それでも、意地を通す。
それは滅ぼすという事を決めた時から変わらなかった。
秋野の腕は粉雪のように消えていく。
「あなたは、全てを破壊するという事を選ばず、私を滅ぼす事を選んだのね」
笑みを浮かべる。
時間を戻す事も、瞬間移動を使う事も、秋野はしなかった。
いや、出来なかったと言ったほうが正しい。
秋野には、魔力が残っていなかった。
冷却から脱出するための時間を逆行する能力の行使。
ジャックに気づかれぬように詠唱破棄の行使。
瞬間移動の行使。
それは、多大な魔力の消費を意味していた。
「ごめんね」
片腕で自分の腹をさすりながら、世界に顔を見せる事のないわが子に謝る。
先ほどまで戦っていた二人は世界から消えた。
草原は風に揺れる。
何事もなかったかのように。
「でもね、私達の間に主張のやり取りは必要ないわ。あなたの主張は極端だし、私も聞く耳をもてないの。それに、あなたは私達の話を聞こうとしない。これほど、無意味なやり取りはないわ」
ジャックは無言のままで、引き金を引いた。
ジャックに時間を消費する気はない。
しかし、弾丸の軌道上に秋野の姿はなかった。
「闘争という欲望は人を変えるのね」
ジャックの背後に立つ秋野。
妖魔という生き物は、人間よりも身体能力が高い。
しかし、いくら速くても瞬間移動が出来るほどの身体能力はない。
「ルール」
「遅い」
背後からジャックを貫く手刀。
ジャックの瞳が閉じようとしたところで、秋野の腕をつかむ。
「『触れると崩壊する』」
そう、独り言のように口ずさむ。
心臓が止まろうとしていた。
それでも、意地を通す。
それは滅ぼすという事を決めた時から変わらなかった。
秋野の腕は粉雪のように消えていく。
「あなたは、全てを破壊するという事を選ばず、私を滅ぼす事を選んだのね」
笑みを浮かべる。
時間を戻す事も、瞬間移動を使う事も、秋野はしなかった。
いや、出来なかったと言ったほうが正しい。
秋野には、魔力が残っていなかった。
冷却から脱出するための時間を逆行する能力の行使。
ジャックに気づかれぬように詠唱破棄の行使。
瞬間移動の行使。
それは、多大な魔力の消費を意味していた。
「ごめんね」
片腕で自分の腹をさすりながら、世界に顔を見せる事のないわが子に謝る。
先ほどまで戦っていた二人は世界から消えた。
草原は風に揺れる。
何事もなかったかのように。