妖魔06~晴嵐~
「ここだ」

俺達は足を止めた。

目の前には何もないのだ。

空き地で、雑草が生えわたっている。

何もないという事は、何かをしなければそこへはいけないわけか。

「決戦の地か」

すぐそこではあるが、まだ条件が揃っていない。

もう、少し待つべきなのか。

それとも、千鶴抜きでいくべきなのか。

俺には、千鶴抜きではどうにもならないような気がしてきた。

セーブ機能があれば今からでも突っ込んでやるのだが、ファミコンのアクションゲーム並に危険度は高い。

時間がまだある。

しかし、クルトは行く気満々だ。

相手は姉だけじゃない。

それだけはいえる。

「クルト、一人で行くな」

俺はクルトの肩を掴んだ。

「オラだけで行く。最初から、そのつもりだ」

クルトが俺の手を振り解く。

「姉の元に辿り着く前に死ぬぞ」

それは、美咲と二人で行ったとしてもだ。

美咲はクルトが行くなら行くつもりだ。

クルトが無駄に突っ走って無駄に美咲を死なせるようならば、全てが無駄になる。

クルトと美咲に相当な強さがあるなら、話は別だがな。

それに、準備もしていない。

魔力補充の術がないのに、どうやって勝てるのか。

「クルト、悪い」

俺はクルトを抱え上げ、逆方向に走り出す。
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