妖魔０６～晴嵐～
俺の走る後を三人がついてくる。

「何をするだ！」

クルトは腕の中で暴れる。

「お前や美咲を死なせるわけにはいかない」

「お前が決めるな！」

「だから、謝ってるじゃないか」

「それで済むか！離せ！」

「出来るわけ、ねえだろうが！」

俺はつい大声を上げてしまう。

クルトは驚きの表情を見せている。

「お前が必死になるのは分かる。だけど、無駄死にさせて悔しい気持ちだけが残るなんて、とんでもない話なんだよ」

「そんな事言ってるお前は、無駄死にしただ」

「お前が無駄死にしていいというのは話が別だ」

生きていなければならないのは確かだ。

でも、意思の尊重はしてやりたい。

それが、死ぬ事になってもな。

「お前は姉を止めたい。そうだろ？」

「そうだ」

「姉の前に敵がいた場合、お前は魔力を消費する事になる。そこでなくなれば、お前は穴を開ける能力を使えなくなる。お前はどちらかといえば、近接戦闘よりも、遠距離からの攻撃が向いている。だったら、穴の能力は必須だ。それを踏まえて、準備が必要なんだよ」

俺は勝てる確立を上げるために説明を行う。

「それでも、絶対勝てるわけじゃないし、説得できるかどうかも分らない。以前のお前ならどうかは分らないが、今は少しでもお前に生き残って欲しいと思う人間や妖魔はいるんだ。それを頭の片隅に置いといてくれ」

クルトは、暴れるのを止めた。

「一日、時間をくれ」

後一日で千鶴が来なければ、俺はクルト達と突っ込む事になるだろう。

駄目でもそうしなければならない。

時間がないからだ。
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