妖魔06~晴嵐~
眼を赤く光らせて、ナイフを片手に突っ込んでくる。

速い。

退魔師の中でも速さを誇る人間だけはある。

そして、『乾』の素質を受け継ぐだけもある。

一対一なら負けないかもな。

俺は、今は能力を使う事が出来ない。

いや、出来なくなったといっていい。

瑠璃子の能力封じが発動しているからだ。

最初に出会ったときも、襲われたよな。

「でもな、今は逃げないぜ」

ギリギリのところまで瑠璃子の行動を見る。

下からの切り上げ、それをバックステップで回避。

そして、回転蹴りという連撃。

俺は生身の腕でそれを受け止めた。

しかし、勢いのある蹴りで二歩ほど下がる。

瑠璃子が地上に降り立つと、間合いを詰める。

こちらに攻撃をさせないつもりか。

「妖魔なんてえええええ!」

「妖魔が、嫌いか?」

突進してくるナイフを鉄の手で握り締めた。

「なに?」

最後まで隠していてよかったといえる。

最初に見せていたら、確実に違う手段で俺は斬られていただろう。

痛みはないが、再生が出来ないから後々やりにくくなる。

しかし、もう一つのナイフが俺に襲いかかろうとしていた。

そういえば、瑠璃子は二刀流だ。

刹那、片腕に鉄球がめり込んだ。

「瑠璃子、それ以上やると、アタシがアンタを処断しなければならなくなるわ」
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