妖魔06~晴嵐~
回転した鉄球が飛んで子鉄の手中へと戻る。

「アンタの過去に妖魔とのトラウマがあろうと、常に一定に保つのよ。それが出来なければ、退魔師は止めなさい」

瑠璃子は落ち込んだ顔を見せる。

手厳しい一言を放った子鉄が俺によって来る。

「何か用なの?」

「顔が見たかっただけさ」

最後の最後に、最初の恋人である子鉄の顔を見ておきたかった。

どれだけ女関係に節操がないんだといいたくなるな。

それは前から分っていた事だけどな。

「じゃな」

「ねえ、あんた、名前、言いなさいよ」

「葉桜丞だ」

今更、隠す必要もないだろう。

言う必要もなかったりはするんだがな。

多分、覚えておいて欲しいという願望なのかもしれない。

「丞ちゃんね。で、本当はアタシの顔を見に来ただけじゃないんでしょ?」

子鉄からちゃん付けで呼ばれたのは、いつ以来だろうか。

そして、いつになく鋭い。

「中途半端で去るなんていうのはずるいと思うわ」

「そうか?」

「今の状況、あんたは知ってるんでしょ?」

理由を話すべきなのか。

「アンタとは何度か顔をあわせてるけど、一体何者なの?」

「特に知る必要もないと思うけどな。そんなに、知りたいのか?」

「まあね」

「はあ」

俺は頭をかいて、どうすべきか考えた。
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