妖魔06~晴嵐~
ロベリアを連れて行かないでジャスミンを連れて行くには、矛盾が生じる。

しかし、ロベリアを連れて行くことでジャスミンを連れて行く事になるのは確実だ。

しかし、今のままでは話に筋が通っていない。

「ジャスミン、お前はどうする?」

「いち早く姉さんの下に戻りたいけど、いいわ。あなたの様子を見る事にする」

「そうかい」

ロベリアには土下座するしかない。

ロベリアが待っているならの話であるならな。

「ところで、冬狐って誰よ?またあなたが仕込んだ女?」

「またって何だよ」

「あなた、近くにいる女は手篭めにしてるんでしょう?」

汚い物を見るような目で俺を見ている。

親父と同じような扱いだな。

「昔馴染みだよ」

美咲のマンションの位置を思い出しながらも、弾む会話もなく辿り着く。

そこには、変わらぬマンションがそびえ立つ。

「あったか」

今の空気中に含まれる瘴気は妖魔を狂わせる。

だからこそ、外に出る事も安易に出来ない。

それは冬狐も同じだろう。

俺達はマンションの階段を上る。

笹原の表札を見かけ、深呼吸をしチャイムを押す。

美咲は俺のことをよく知ってはいるが、冬狐はまだそこまで知らない。

「はあい」

声の持ち主は冬狐ではない。
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