妖魔06~晴嵐~
ドアが開いた先には、パンチー一枚の女性が立っている。

「久遠、服くらい着ろよ」

頭を抱えながら、ため息をつく。

「何が悪いのよ?すごく魅力的なボディーを見せてくれるじゃない」

「ジャスミン、お前、本気でいってるのか?」

「は?本気以外の何があるの?」

変なの二人に囲まれて頭が痛い。

久遠は首をかしげていた。

俺を誰か分っていない。

そういえば、葬式で久遠も来ていたという話を聞いたのだが、記憶がないのだから誰かが死んだくらいにしか思ってないのかもしれない。

思い出がないってのは、寂しいものだな。

「久遠、俺は葉桜吟の孫で、久遠の甥に当たる葉桜丞って言うんだ」

「丞君?」

唐突に俺の匂いをかぎ始める。

「あ、お母さんの匂いだ!」

そして、俺に抱きついた。

「苦労を労って、私と変わってよ」

ジト目ではあるが、嫉妬から来る物ではなく俺とのチェンジ希望らしい。

「状況を考えろよ」

ジャスミンが壊れ始めてきていた。

いや、最初から結構な角度で壊れていたけどな。

「久遠、確かに俺はお前の母親である吟は体内にいる」

しかし、話なんて聞いちゃいない。

匂いがするってだけで俺に抱きついてくるんだから、久遠のマザコンもいいところだな。

「久遠」

身動きの取れないまま困っていると、眠たげな声がしてくる。

背後に立っているのは、俺が求めていた女性だ。

「早く中に入るのよ」

「冬狐」
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