妖魔06~晴嵐~
「何だ?」

「美咲を守りなさい」

「それは出来ない」

多分だが、美咲は来てくれる可能性が高いだろう。

しかし、敵のテリトリーで美咲を守る事は出来ない。

誰かを選ぶとか、そういった事ではない。

俺が辿り着くべき場所まで運ばなければならないのは、千鶴だからだ。

自分を守るだけでも精一杯なのに、千鶴をプラスすれば他の人たちを守る事は物理的に不可能だ。

精神論だけで語るならいくらでも語ってやる。

出来ない物は出来ない。

美咲のことを思うのなら、来るなというべきなのか。

「エゴを優先して、美咲を踏み台にするつもり?」

それは事実だ。

いくら何人という味方を集めたとしても、美咲が死なないという可能性はなくならない。

それは、戦場だからだ。

「あんたが『葉桜丞』で過去に何を起こしたのかは調べたわ。過去にあんたは誰かを選ぶというわけではなく、自分自身を選択した。結果、全ての者を不幸に陥れた」

痛いところをつかれた。

奇麗事云々を抜けば、そういう事だ。

自分の気持ちに正直になれば、全てがまるく収まるわけではない。

美咲を殺し、子鉄を殺し、吟も殺した事になる。

俺という半端者がいなければ、何かが変わっていたのかもしれない。

「分った」
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