妖魔06~晴嵐~
「お姉ちゃん、丞は私の願いをいつもかなえてくれてる」

玄関をあけて、美咲が入ってくる。

「守る事が出来ないといったのは、丞が自分の力量を分っているからよ。だからこそ、丞は出来る限りの生きる手段を用意してくれる」

「美咲」

「私は行くよ。これは里を守るための使命でもあるのだから」

お互いに真剣な表情で見詰め合う。

「そう、分ったわ」

「ありがとう。いつも心配してくれて」

美咲が冬狐の手を掴んで、少し涙していた。

「美咲、悪い」

「ううん、気にしないで」

笑顔になりながら、冬狐の手を離す。

「私は寝るわ」

冬狐は部屋の中へと戻っていってしまった。

条件は果たされなかった。

もはや、冬狐の力を借りるのは不可能だろう。

来た意味はなかったのかもしれない。

「お姉ちゃんに用事があったんだよね?」

「そうだな。でも、もういいや。それより、無理はしてないか?」

札を貼っているとはいえ、瘴気に満たされた世界にいるのだ。

気分がいいわけがない。

「大丈夫だよ」

平然とした顔をしている。

「そうか。なら、いい」

「丞は、言うまでもないか」

「ああ、そうだな。それより、子鉄に全てを話した」

「そうなんだ。子鉄は何て?」

「デコピン食らわされたよ」
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