妖魔06~晴嵐~
「千鶴」

「私が、何とかしなくちゃならないのかな?」

千鶴は恐れを模した表情で涙を流しながら俺を見る。

「何もしなくていい。何も考えなくて良い」

千鶴の傍により、前に座る。

「お前は休んでいいんだ」

戦場を知っているとはいえ、今度は自分に全てが負かされている状態だ。

「俺が何とかするから」

「兄さん」

泣きながら俺に抱きつく。

「千鶴、あなた」

「ジャスミン」

俺はジャスミンを見て、首を振る。

ジャスミンが瞳を閉じ、瞳を開けた。

「甘えてるんじゃないわ」

そして、冷たく言い放つ。

「ジャスミン!」

「あなたが動かなくちゃ全てなくなるのよ。苦しい思いをするのはあなただけじゃない。そんな言わなくてもいいような当たり前の事を何故分らないの?」

ジャスミンはとめても、言い続けるだろう。

「全てを背負うっていうのは、大変なんだよ」

「だからって、葉桜丞は逃げ出した?葉桜丞は苦しい思いをするのを分っていたからって逃げ出そうとした?そうじゃないでしょ?責任を果たすために生き返ってまであなたの目の前にいるのよ。それも、時間を気にしながらも、逃げ出そうとしてるあなたを救うためにね」

「私は」

「誰だって悩む時はある」

「ええ、それが何もないときにならいいわ。でも、時間がないのよ」
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