妖魔06~晴嵐~
握りこぶしを見せる。

「私もあなたを全力で守る!私もあなたを生かす努力をする!私達はパートナーじゃないか!一人で泣くなら私を頼りなさい!」

「ジャスミン、お前は」

最初から分っていた。

ジャスミンも千鶴の事が心配なんだよ。

「何もしないで、誰も頼らないで、泣き続けるな。そんなことで姉さんや千鶴を死なせたくないのよ」

ジャスミンは立ちすくむ。

「千鶴、お前が嫌というのなら、俺は俺なりの方法を探して何とか奴をぶっ殺す。だが、もし、お前がやる気になったのなら、お前を連れて行く。そのスタンスは変わらないし変えない」

ジャスミンの言った事を無駄にしているようではあるが、仕方ない。

こればかりは、千鶴の意思が問題なのだ。

だが、ジャスミンの言葉は響いたものだと考えてもいいかもしれない。

「今日は一緒にいるか?」

「ううん、大丈夫。少し、考えるね」

そういいながら、微笑を浮かべた。

しかし、すぐには精神的に変わらない。

悲痛さが伝わってきているのだ。

「分った」

俺は立ち上がり、背中を向けた。

「行くぞ、ジャスミン」

「千鶴」

名前を呼んで何かを言おうとしたが口を噤んだ。

時間は、1時を指している。

そろそろ、龍姫の世界に帰るべきだろう。
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