妖魔06~晴嵐~
「あなた、何故はっきり言わないの?」

ジャスミンが帰り道で問うてくる。

「現実は甘くはない。それだけさ」

いつ死ぬかはわからない。

それが現実だ。

「でも、あなたの優柔不断なところが、千鶴をあそこまでさせたのよ」

「だから、ジャスミンのようなパートナーがいるんだろ?」

「あなたが言わなきゃ、意味ないじゃない」

「今日の言葉には意味があった。千鶴の心に届いていたさ」

「人任せとか、最低よ」

「かもな」

俺は口を閉ざしたまま、廃ビルの前に立つ。

「龍姫」

空を見上げる。

数分後に龍姫が舞い降りる。

「夜遅くにすまないな」

「良い。そなたはどうであった?」

「ジャスミンの存在は、大きかったってところだな」

ジャスミンを見るが、不機嫌な顔は変わらない。

「勢いのままに出てきてしまったけど、そっちはどうだったんだ?」

「変わらずじゃな。じゃが、そなたを慕う者は悲しき顔は消えなかった」

「姉さんが!」

目を見開き、怒りを見せる。

「落ち着け、今から戻るんだからな」

俺達は龍姫と共に、龍姫の世界へと戻る。
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