妖魔06~晴嵐~
しかし、辿り着いた先は、龍姫の世界ではない。

どこか分らぬ亜空間であった。

地に立てているという事は、まだ問題ないというところか。

「ここは、一体なんなの?」

ジャスミンが周囲を見渡す。

「ふふ、どうじゃ?」

龍姫が奇妙に笑う。

「お前は龍姫じゃない、か」

龍姫もどきは攻撃の与える隙もなく、数歩先へと飛び離れる。

「ここで朽ち果てるがよい」

「時間稼ぎか」

しかし、そろそろ来るのではないかと思っていた。

だが、いつ来るのかは分らなかった。

相手の内部を除く吟の能力も常に発動してるわけではないしな。

イヴァンはイヴァンで、自分を生かすための手段を取るな。

「そなたの命も、わずかよのう」

龍姫もどきは霧のように消えていく。

元の世界に戻ったのかもしれない。

「かもな」

「ちょっと、このままここにいるつもり?」

ジャスミンの焦燥が手に取るようにわかる。

「お前が傍にいれば問題ない」

「抜け出せる案でもあるわけ?」

「あるっちゃある。ないっちゃない」

「いつもはっきりしない男ね。こんな男に姉さんは」

「そう言うなって。俺では、魔力で発動させる転移陣は使えないんだよ」

一般的な能力を使う際に魔力を使っているわけではない。

魔力の代わりにどこから養分を持ってきているのかは、俺にはわからないのだけどな。
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