妖魔06~晴嵐~
「断るといったら?」

「千鶴には選択させて、私には選択させないつもり?」

意地でも使って出ようというつもりか。

「最悪の可能性もある。もし、転移陣で出られなければジャスミン、お前はただでは済まない」

亜空間には治療する方法がない。

もし、成功しなければ、最悪の結果が待っている。

俺はジャスミンの肩を掴み、目を見る。

「もう一度言う。俺はお前に使って欲しくない」

しかし、ジャスミンの目には迷いがなかった。

「私は絶対に使う」

「それが、お前の選択なんだな?」

「こんな時にこそ、何事もチャレンジしなくちゃ気が済まないのよ」

ジャスミンは意地っぱりなんだよな。

もう言っても聞かない。

それが失敗しようが成功しようが、関係ないのだ。

「今から言う詠唱を覚えるんだ」

俺は転移陣に使う詠唱をジャスミンに教え始める。

それは、転移陣だけにあらず。

失敗した時のために転移陣と共に、外に気配を伝える術式も組んでいる。

もし、少ししかつなげられなかった場合でも、亜空間の場所を特定できるはずだ。

そして、負担としてはあまり変わらない。

「いいか、これだけだ。後は場所と場所へつなげるイメージを的確にするんだ」

「分ったわよ」

そして、ジャスミンは詠唱を始める。
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