妖魔06~晴嵐~
俺が飛び出たのは、廃ビルの前だった。

「ジャスミン?」

しかし、ジャスミンの姿はない。

「ジャスミン!?」

俺一人が元の世界に戻ってきてしまったのか。

しかし、ジャスミンの気配は消えていない。

亜空間の向こう側に一人置かれていたのにも関わらずだ。

俺は、手の中を確かめた。

「契約コア?」

光っている。

これはジャスミンのコアだ。

俺を押した後に、自分のコアも俺の掌に忍ばせたのだろう。

ジャスミンは生きている。

だが、光が弱っているのも確かだ。

コアが空気に触れている状態で、更に負担がかかっているとなれば痛みは大きい。

「すぐに何とかしてやる」

今救えるのは千鶴しかいない。

ロベリアは中のコアを抜かなければならない。

それでは、ロベリアが危機に陥ってしまう。

多分、ジャスミンは千鶴の場所まで自分のコアを飛ばせる力はない。

俺は全速力で自分の家へと走る。

自分の足が壊れるほどに。

自分の肺が潰れるほどに。

しかし、龍姫が前に現れる。

いや、俺の目には龍姫もどきに移っている。

「邪魔だ」
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