妖魔06~晴嵐~
「ガキが」

俺はクルトを追わない。

可能性を一つずつ潰していくためだ。

ずっと後を追い続けていれば、俺達はいたちごっこのまま終わる。

もし、同じ場所を回っているのであれば、クルトが俺の後ろに到達する。

しかし、もし道が続いているのならば、進むしかない。

鼻を使うにしても周囲のニオイが濃厚すぎて、一定距離を開くと分らなくなる。

自分の能力は使い方によってはいいのだが、今は微妙としかいいようがない。

俺の能力は周りに誰かいて初めて役に立つ。

今はクルトだけだ。

クルトの能力はどうだ?

空間に穴を開ける能力は、使えおうと思えば使える。

クルトを利用すべきだろう。

「面倒くせえ」

燕のようなタイプも面倒だが、クルトのようなタイプも面倒だ。

今の状態がそうさせている。

本来ならば、必要はないのだがな。

「ち」

止まった時から、俺は能力を発動させている。

ニオイよりも的確に位置情報を知る事が出来るからだ。

距離には限界があるが、まだクルトの位置を把握できている。

だが、数分経ったところで突如としてクルトの位置情報が消える。

「何かが起きたか?」

俺としては好都合。

求めているのは不変ではなく、変化だ。

クルトとは共に行動しているが、仲間というものでもない。

だからこそ、利用できるのならば、する。
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